社員通信 タイの学校庭
日々、都会の木々を眺めていると、ふとタイ古式マッサージの修行で訪れたチェンマイの学校の庭を思い出すことがあります。
学校はタイ王国第二の都市チェンマイの中心部から少し離れた静かな場所にあり、広い敷地に施術を学ぶ部屋、食堂、宿泊施設が備わっていました。全員が集まる大きな食堂の屋根に覆いかぶさる様にスターフルーツが実り、裏庭の池の周りにはチョンプーと、ソムオーなど柑橘系の木々、広い表の庭にはブーゲンビリアやマンゴーの木などが植えられていました。
タイ古式マッサージ、フット、フェイシャル、リンパマッサージに加え、ルーシーダットン(タイ式ヨガ)や、瞑想の授業などの中からいくつか選択して受けることができる学校で、月曜から土曜まで1日6時間授業があり、1課程が終わるとその都度試験がありました。暑さに慣れてるタイ人の先生が「タイは、暑いか、いっぱい暑いかどっちかだ」と言う通り、
冷房のない部屋での授業は気を失いかけるほど暑さで、目に入る庭の木々に助けを求めたくなりました。
休憩時間になると、さっきまで厳しい授業をしていた先生たちが遊び出します。目の前にあるマンゴーの木にひょいと登り、熟したマンゴーを下に落とし始め、生徒達が慌てて下でキャッチします。皮は緑で心配ですが中は黄色く熟していて、すっきりした甘さで美味しいんです。
私も、その並びにあるタマリンドの木に登り、熟した実を頂きました。アジア圏でタマリンドは滋養があり気軽に食べられる栄養食品として加工され売られています。マッサージよりもこうした休憩時間のフルーツの見分け方の方に、より興味が湧いてしまいました。
昼食は当然タイ料理で、北部の料理『カオソーイ』というタイカレーヌードルが一番人気でした。パクチーをたっぷりと小さなタイのレモンをちょっとかけて。全く初めての食材が登場することもあり、その中でも真っ青なご飯や青いドリンクが気になっていました。
最初は驚きましたが、タイではよく見かけるもので、「さっきのはこの花の色素だよ」と裏庭で先生が見せてくれたのは、タイ名『アンシャン』と云う青い花でした。
昨今日本でも話題になっているレモンを入れると紫に変わるお茶などで知られる英名『バタフライピー』の事です。タイでは育毛効果があるとされ、赤ちゃんの眉毛に塗ったり、シャンプーや育毛剤としても使用されています。
食だけでなくタマリンドやウコンなどでフェイシャルパックを作ったり、身近にある植物は美容などでも活躍していました。
その土地で獲れる物を最大限生かす。
そんな単純で当たり前の事を、何でも楽に手に入る私達現代人は忘れてしまいがちではないかと感じます。
1ヶ月過ごした理想の庭、美味しい果物が実る楽園の様なあの庭を時々思い出し、都内の街路樹がマンゴーだったらなあと妄想してしまうのです。(2021/3/5 S.O)